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【寸法】
登録証種別:刀
登録証銘文:「無銘」
登録証長さ:2尺2寸6分(約68.4cm)
登録証反り:5分
元幅:2.85cm
先幅:2.2cm
元重:0.65cm
先重:0.45cm
【刀身】
本造、庵棟、身幅広く、反り浅く、鋒延びる
鍛え、板目に杢交り、地沸厚くつき、乱れ映り立つ
刃紋、大互の目に丁子がかり、耳形の互の目を交え、足・葉入り、沸よくつき、砂流しかかり、金筋入り、湯走り状の飛焼かかる
帽子、乱れ込み、掃きかけて沸裂けるように突き上げて尖り、返る
中茎、大磨り上げ、先切
彫物、表裏に棒樋
ハバキ、銀着一重
【説明】
徳川家康から吉良家の祖に下賜され、維新後には大愛刀家・清田直に伝わった来歴を持つ、長船長義の刀です。
長船長義は南北朝時代の名工であり、備前刀と相州伝が融合した「相伝備前」の代表的な刀匠として知られています。
貞和から康暦にかけて活躍したとされ、長船兼光とともに当時を代表する名工として多くの文化財指定を受けるなど、刀剣史上でも名高い刀工です。
本作は、長義の特徴とされる耳形に二つ連れた互の目を焼き、強い沸出来に乱れ映りが立ち、湯走りや飛焼がかかるなど、長義以外には極めることが
難しいように考えられ、南北朝時代の相伝備前、特に長義の傑作の出来栄えを示しています。
本作には、元熊本藩出身で十五銀行の常務取締役を務めた明治の大愛刀家・清田直による来歴書が付属しており
それによれば、この刀は関ヶ原の戦いの際、吉良家の祖・吉良義弥に家康から下賜され、元禄赤穂事件まで吉良家の重宝とされていたとあります。
その後、吉良家が断絶した際には同族で祭祀を継いだ東條家に渡り、その後裔である吉良義道氏から、明治の有名刀剣商「網屋」を経て
清田直が代金五百円で手に入れたとされています。
明治当時の巡査の月給が五円の時代の五百円ですから、清田が相当な対価を払って本刀を求めたことがうかがえます。
来歴書にはその経緯が克明に記されており、清田直の満足度が伝わる貴重な資料です。
付属の孔雀紋の黒漆鞘は、いささか異風の造り込みではありますが、来歴書にも掲載があるため、
吉良家にまだ伝わっていた当時、恐らくは幕末以前の作と考えられます。一流の蒔絵師による孔雀の羽を鮮やかに描いた黒漆塗りの上等な鞘で、
質素ながらも丁寧な塗りが施されています。恐らく拵のみでも鑑定書を取得できる価値があるでしょう。
家康から下賜された伝承にふさわしく、吉良家で相当に大切に扱われたことがうかがえます。
有名な吉良上野介が自らの差料としていたかは不明ですが、赤穂浪士の吉良邸討ち入りの際には吉良邸にあったと考えられ、まさに歴史の生き証人といえる刀です。
たとえ来歴がなかったとしても、相伝備前の名刀であり、耳形の刃に乱れ映りや湯走りが見られる長義の特徴がよく表れた一振りです。
本作に添えられた古い来歴書が奇跡的に残されていることで、吉良家で重宝として大切にされてきたことがわかり、まさに錦上添花の稀有なケースとなっています。
登録は昭和26年の大名登録であり、まさに戦前以来の名刀です。今回奇跡的に生ぶで出ましたが、もちろん刃切等の致命的な傷はありません。
現代の鑑定書はありませんが、家康、吉良家、清田直という名家を渡り歩いた来歴を持つ刀であるだけでなく、美術的にも、
長義以外には極め難い南北朝時代の大磨り上げ相伝備前の傑作を示す一振りです。ぜひ上位の鑑定書を添え、愛刀家にとって一世一代の家宝としてお求めください。
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